フラワーギフト

夜の入口 

半分、夜に浸っているデハ801。
空の明かりも、水平線に紅く残るだけ。


「夜の入口」

外川駅から夜に向かって走り出そうと、
運転士がヘッドライトのスイッチを入れた。

二つ目玉の丸いライトが、オレンジ色の空と同じに光る。

夜の線路をライトが照らす。
車内にもオレンジ色の明かりを乗せて、ドアがガタンと閉まる。

前方安全ヨシ。
夜の線路に、釣り掛モーターの音が響く。

ヘッドライトの時刻 

空には薄明かりが残っていても、
地上には夜が降り初めている。


「ヘッドライトの時刻」

空の明るさに目が慣れて、ふと地上に目を移した時、
地上は夜の準備がすでに始まっていた。

そこにデハ801が、ヘッドライトを輝かせ目の前を通り過ぎてゆく。

車内の明るさも際だつ時間、ヘッドライトも行く手を照らす。
秋の夕暮れは、瞬きする間に夜へと移って行く。

秋色線路 

秋色の絨毯を敷き詰めた地面に、二本の線路。
その上をゴトンゴトンと小さな電車がやって来た。


「秋色線路」

秋の陽射しを後ろに浴びて、光る線路の上を電車が走る。
わずかに波打つ線路に合わせて、車体も揺れる。

前も後ろも、季節は秋色。

秋色の中を走る、赤い電車が紅葉を先取りしていた。

運転手 

デハ801を動かしている運転手。
運転手の手が動くと、釣り掛式のモーターも音をうならせて速度が上がる。


「運転手」

君ヶ浜駅からしばらく上り坂が続いている。
モーターも更にうなりを上げて、坂を上って行く。

独特の釣り掛音に、ファンも多い。

魅力は何だろう。

耳にすることが少なくなった、原風景の音。
懐かしい音。

昔は電車に乗ると、あたりまえに聞こえていた音が、
いつしか、周りから消えていた。

銚子に来ると聞こえる音。
そんな音も、いつしかきこえなくなる日がやってくる。

乗客 

仲ノ町駅に降りる、人々の顔。
停車する電車は、デハ801。


「乗客」

乗る人、降りる人、様々な人たちが銚子電鉄にやって来る。
若い人、年配の人。

銚子電鉄の好きな人達が集まってくる。

写真を撮る人、絵を描く人。

それぞれの想いで、銚子電鉄を記憶する。
たくさんの記憶が801に乗っている。

金色(こんじき) 

金色に輝くデハ801が、神々しい。
神が宿った瞬間を見たような、眩しいほどに輝く車体。


「金色(こんじき)」

一瞬の光に包まれる時、昼間には見られない一面を見た。

家宝にしたい801の姿。
その価値は、計り知れないほどの大きなもの。

誰かと分ち合いたい、素敵な夜の801の光。

夜の花 

夜の仲ノ町に咲く、夜のコスモス。
対向車のヘッドライトに801が浮かび上がる。


「夜の花」

コスモスにもヘッドライトの灯りが漏れて来た。
その瞬間。夜の風がコスモスの存在を影の世界へ落とし込んでしまった。

ライトを浴びた801が、その花を持って明るい舞台に立とうとしている。

そして、音楽が鳴りだし、幕が上がる。


夜の光 

801の車体に夜の光が当たる。
夜の光の中では、どんな色も、消え失せる。


「夜の光」

赤が消えた、黒は闇の中。
光が当たり、色が見える。

夜の光に、色は無い。

そこにあるのは、形のみ。
四角い車体に張り付く、窓枠の形。

ドアの形と、ガラスの平面。

光が消えると、すべての形も消え失せる。

85年 

今年は、銚子電鉄開業85周年になる。
その記念エンブレムを付けて、801が快走している。


「85年」

801に付けたエンブレムは、木彫の手作り一品もの。
これは、現役古株の801に捧げている。

鉄子カラーの1002には、シールの85年エンブレム。

走り始めた85年前は、大正12年。
そして、その前の年に生れたデキ3が銚子電鉄にいる。
外川駅も開業当時の駅舎がそのまま使われている。

目に見える85年の歴史。
手に触れる85年前の温もり。

これからも時の流れをつないで、銚子にあり続けて欲しい。

夏の顔 

丸い太陽を、そのまま花に映したひまわり。
夏の訪れを教えてくれるように、黄色い顔で電車を見ている。


「夏の顔」

デハ801の赤い車体に、黄色いひまわりが良く似合う。
夏の間中、電車に顔を向けて、お客さんにあいさつしてる。

「今日も暑いね。
窓を開けて、銚子の風で電車の中をいっぱいにしてね。
銚子の電車は、扇風機と自然の風がエアコン代りだよ。」

まだまだ、太陽の下で夏の顔が咲いている。

「今日も暑いね」