フラワーギフト

一番星 

南の空に、三日月と一番星が光る。
止まる電車は801。


「一番星」

夕焼け空が終わる頃、一番星が光りはじめる。
空には雲一つ無く、宵が深まれば満天の星空になりそう。

三日月と一番星に送られて、801がもうすぐ外川を出発する。

月の明かりをほんの少し屋根に乗せて、
ガタゴト電車が走り出す。

電車の窓に三日月乗せて。

ひかりの夜 

君ヶ浜にひかりが走る。
時速300キロの新幹線、では無い。


「ひかりの夜」

松林を抜けて、ひかりの束が向かって来た。
線路を光らせ、草も青くざわめき出す。

時速40キロのひかりが走る。

目の前をゆっくりと、ガタゴトとひかりが走る。
目にもしっかりと焼き付く様に、ひかりの束が走って行く。

木の駅 

木造りの駅は、やっぱりほっとする場所。
木の柱に、木のベンチ。


「木の駅」

木の温もりのある駅のホームに、電車が滑り込む。
電球色に照らされると、なおさら温もりが伝わって来る。

暗くなって木の駅に降りる人は、地元の人ばかり。
仕事や、学校が終わって、木の温もりが迎えてくれる駅に降りる。

毎日、毎日、85年間変わらずに迎えてくれた。
いつもの事だけど、この駅にしかない特別なこと。

外川の駅の温もりに感謝。

お互い様 

いつからここに居るんだ。
とっくに現役を引退しんだろう。


「お互い様」

仲ノ町駅に気になるやつがいる。
こいつの脇を、801が通り過ぎる。

ナンバーも無く、気が付いたときにはここに居た。
昔は、現役で町中を走っていたんだろう。

801と同い年か。

いや、801の方が先輩か。

801が声を掛ける。
いつまでもそこに居てくれよ!

小さなバイクが、お互い様と返事する。

月の光を浴びて 

全身に月の光を浴びて、踏み切り番が立っている。
遠くの街灯の灯も届かない、夜の君ヶ浜。


「月の光を浴びて」

暗さに目を慣らして、やっと見える踏み切りの番人。
誰も通る人が居なくても、立ち続ける踏み切り番。

今宵は、満月の夜。
一人静かに、月見と洒落てみよう。

じっと見るほどに、月の青さが体に染みる。

森の線路 

森を歩いていたら、突然線路が現れた。
森の木々に囲まれて、
森の中を這って行く。


「森の線路」

木のトンネルに線路が吸い込まれている。
その先はどこに繋がっているんだろう。

森の木達が呼んでいる。
森の向こうに呼んでいる。

木達がザワザワ動き出して、
もうすぐ電車が来るよと教えてくれた。

月光 

月明かりに鈍く光る、二本の線路。
暗闇の中に踏み切りが存在する。


「月光」

月夜の照明に照らせて、ひっそりとその存在感を表す。
この踏み切りを渡る者は居ない。

静かな夜の、静かな踏み切り。

今宵は君ヶ浜の波の音も聞こえず、
月からの聞こえぬ音に、耳を澄ます。

月夜の電車 

明るい満月を見ながら、電車が走る。
一筋の光を残しながら、電車が走る。


「月夜の電車」

月明かりに照らされた、青い空間を電車が走る。
ガタンゴトンと青い空間を、電車が走る。

赤いランプが、電車の後を追いかけていく。
小さくなった電車の後を追いかけていく。

どこまでもどこまでも、
月夜の電車が走っていく。

犬吠駅快晴 

最高の青空が犬吠駅の上に広がっている。
その駅に降りる、人の波。


「犬吠駅快晴」

デハ801の3つのドアからいっせいに降りてくる。
一人、二人、三人、四人。

それでも、まだまだ降りる人。

ホームから、駅舎へ。
駅舎から犬吠埼へ。

801から降りる人の流れが止まると、
3つのドアが静かに閉まる。

青空の犬吠駅から、終点の外川に向けて発車する。
ベンチには、帰ってくる上り銚子行きを待つ人も居る。

青い空を切り取って、白いバックに詰め込んだら、
素敵なお土産の出来上がり。

平行線 

緑に光る平行線。
どこまで行っても平行線のまま。


「平行線」

二本の線は交わることはない。
離れることもない。

カーブをしても、二本の線の間は同じ。
坂を上っても、坂を下っても間は同じ。

正確な巾で永遠に伸びている。
1067mmで永遠に。