フラワーギフト

Uの字 

いつもの駅の、いつもの改札口。
ここにUの字で始まる、世界があった。


「Uの字」

UMIの青色の中に
UCHUが見えた

空気の無い空間を
UOが泳ぎ
UNIの棘が星になる

遙か遠くから
UCHUの
UTAが聞こえてくる

そこにいる者達の
UNMEIの
UTAが聞こえてきた

デキ3のバランス 

デキ3に光が当たるとカタチが浮かび上がってきた。
そのカタチは、ここにしかない。


「デキ3のバランス」

ひとつひとつのカタチが、バランスを取っている。
機能のバランスだったり、デザインのバランスだったり。

無駄な物はひとつもなく、それぞれが良いバランスで、
デキ3を形作っている。

そして、その物達が纏っている色は黒。
黒とカタチのバランスもまた良い。

夕闇に溶ける 

暮れる時間の笠上黒生の駅。
夕空に溶け込むように、ホームから電車が発車する。


「夕闇に溶ける」

今日の日は、夕暮れの空にとけ込んでいく。
電車のカタチが夕闇に溶けて、今日の日が終わる。

目の前のカタチが溶けて、音も夕空の彼方へ溶け込んで行った。

これからの時間は、静かな夜。
暗闇にすべてのカタチが溶け込んで、
灯に照らされた物だけが、浮かび上がってくる。

曖昧な世界 

肩の力を抜くと、目の前に曖昧な世界が現れた。
ピンと張りつめた指先の力を抜いて、曖昧な世界に入り込む。


「曖昧な世界」

カメラのファインダーに、デハ1002が飛び込んでくる。
遠く遠く、ゆっくりゆっくり。

シャッターを切るタイミングを見ながら、
迫る電車を追いかける。

夕暮れの時間。
その瞬間に、曖昧な世界が訪れる。

しっかり捕らえようとすればするほど、
指先から曖昧な世界に入って行く。

シャッターを押した時、
まわりのすべてが、曖昧になった。

光を射る 

犬吠駅に向けて、光の矢を射る。
暗闇を明るく照らしながら、矢は真っ直ぐに飛んで行く。


「光を射る」

電柱を照らし、線路を照らす。
畑を照らし、草を照らす。

周りのすべてを照らす光の矢。
その先の犬吠駅に、的を絞る。

駅に当たった光の矢は、
ホームと、駅舎を照らし、
そこに待つ人の顔を明るく照らす。

燻し 

長い年月の間に燻されて、鈍い光を纏う。
デハ702の屋根のカーブ。


「燻し」

車体に打たれた、リベットも今では珍しくなった。
リベットのくり返す模様も、渋さを増している。

淡い光の中に、時代が浮かび上がる。
銚子に残る、昭和のカタチ。

笠上黒生の静かな夕暮れ 

人の気配が一瞬消えて、静かな夕暮れが訪れた。
止まる電車にお客さんは乗っているんだろうか。


「笠上黒生の静かな夕暮れ」

駅舎の人影も消えて、上り電車を待つ間、
時が停まったように、すべての動きが止まっている。

ほんのわずかな時間だけど、
今ここにいると、停まった時を経験出来る。

空の色も、変わるのを止めて、
時を刻まない時間を演出している。

そんな時間もすぐに動き出した。
上り銚子行きの車輪の響きが、
すぐ後に迫って来た。

電車がホームに止まる頃、
空の紺色が急に濃くなった。

停まった時間を取り戻す様に、
空の明るさが消えて行く。

終点の801 

検査が「終了して、久しぶりに外川へ到着したデハ801。
まだまだ現役と、モーターを唸らせながら、ホームに滑り込む。


「終点の801」

仲ノ町の駅で、台車を外され、検査中だったデハ801も、
無事に本線に復帰して、吊り掛モーターの音を響かせてくれた。

これで、しばらくは走り続けることが出来る。

ブレーキを軋ませて、ホームの定位置に止まる。
車体を見ると、痛みも激しくなってきて、
所々、錆が浮いてきている。

それでも現役!

この座を、まだしばらくは譲らないで欲しい。
優雅にその車体を魅せていて欲しい。

草の中 

やっぱり線路は、草の中。
刈っても刈っても草の中。


「草の中」

硬いレールが、草のジュウタンの上に、
ふんわり乗ってるよう。

でも、電車がガッタンゴットンやって来ると、
足元しっかり踏ん張って、重い電車を支えてる。

線路と枕木が動かない様に、地面の中で支えてる。
電車ものんびりゆっくり、草のジュウタンを進んで行く。


待ち続ける 

君ヶ浜駅の片隅に、そっと待ち続けているベンチがある。
片足が壊れて、もう座る人は居ないだろう。


「待ち続ける」

ホームに着く電車から降りてくる人も、
このベンチには気づかないだろう。

誰も座らなくなった、木のベンチ。
いつまでここに居るんだろうか。

青い電車がやって来ても、
赤い電車が来ても、
誰も座らないベンチは、ここに居る。

他に行きたくても、片足の無いベンチは、
どこへも行けない。