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時間の停車場 

時間が止まる駅がある。
昭和から平成になっても、時間が止まり続ける駅。


「時間の停車場」

時刻表には乗っていない、時間の止まる駅。
いつから時間が止まるようになったのだろう。

ここの駅に止まる「時間」は、目に見える。
ベンチ、床、柱に壁、すべてに時間が止まっている。

次に時間が動き出すのは、いつになるだろう。

ホームの向こうに止まる電車達は、
長い間、時間を運んで来た。

その電車達は、そろそろ時間を運ぶのを止めるそうだ。
この駅に止まっている時間は、
次の電車が運んで行くのだろう。

赤い帯 

夜の駅舎に電車が止まる。
駅舎の灯が、赤い帯を浮かび上がらせた。


「赤い帯」

止まった電車は走り出す。
動く赤を追いかけた。

駅の隙間から追いかけた。
グングン早くなって、目の前から消え去った。

赤い帯が、目に残る。
残る帯は、古い電車の僅かな記憶。

吊り掛電車の記憶が残る。
赤い帯の記憶が残る。

夜の穴 

暗い地面に、ぽっかりと穴が開いた。
黒い地面の、黒い穴。


「夜の穴」

穴の中にも駅舎がある。
どっちの駅に行ってみようか。

地面の黒い穴の中にも、行ってみたい。
どんな世界になっているんだろう。

上と下が逆さまの、夜の穴。

走る電車も、逆さまなんだろうな。
上りと下りも反対で、
上りが下りで、下りが上り。

夜の穴が開いているのは、僅かな時間。
入って行くなら今のうち。

外川駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子] 

外川の風を捕まえてみたい。
カゴの中いっぱいに、外川の風を捕まえたい。


「外川駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子]」

外川の風ってどんな風?
そよ吹く風、びゅーびゅー吹く風、ゴーゴー吹く風。

外川の風は、坂道を駆け上がって、
フーっと一息ついた風。

そんな風を捕まえたら、
カゴの風車がクルリクルクル回り出す。

一息ついたら、カゴを抜け出して、
電車の後を付いていった。

海鹿島駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子] 

海鹿島駅長室に白いアシカ。
切符は売れない、アシカが一頭。


「海鹿島駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子]」

丁寧にお断りを掲げる駅長がいる。

「〈お客様へ〉
乗車券は、電車内で、お買い求め下さい」

手書きの文字が郷愁を誘う。
帽子を被って、堂々と窓口に座っている。

それでも、切符を売れない、アシカの駅長。

それもそのはず、アシカの顔は仮の姿。
本当の顔はその下にある、アメフラシ。

アメフラシじゃ仕方がないか・・・?

君ヶ浜駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子] 

君ヶ浜駅に並ぶ、四角い箱の列。
バランスと不揃いが同居している、箱の列。


「君ヶ浜駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子]」

規則正しくならんでいても、それぞれに個性がある。
木柱だったり、枝だったり、ボルトだったりする。

四角い箱の自己表現。

無機質な白い階段の前に並ぶと、
なおさら個性が際だって見える。

その個性は、地面から空へ向かって開いて行く。
小さな箱から、無限の個性が飛び出して来る。

本銚子駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子] 

今年も開催された、コンテニュー・アート・プロジェクト2009。
銚子電鉄の駅が美術館になった。


「本銚子駅[コンテニュー・アート・プロジェクト2009IN銚子]」

本銚子駅舎の天井がふわふわになった。
ふわふわを通して、灯がもれる。

天井が雲の中に隠れて霞んで見える。
ふわふわな雲と、隙間から差し込む灯。

白い駅舎内が、なおさら白くなって、
ふわふわ感に包まれる。

雲に触れてみよう。
雲は消えずに、手に触れた。

横顔[伊予鉄800型] 

遠くの投光器に照らされて、ほんのり横顔を見せている。
作業員に導かれ、これから走る路を見つめている。


「横顔[伊予鉄800型]」

銚子の路はどんな路だろう。

潮の香りと、醤油の香り。
たくさんのお客さんを乗せて、
懐かしさのある路を往復する。

子供たちは喜んでくれるかな。
ガタゴト、ゴーゴー響かせて、
銚子の路を走って行く。

期待と楽しみを、
その横顔が見つめていた。

移動の時[伊予鉄800型] 

笠上黒生駅構内に入ってきた、トレーラー車。
まだまだ慎重に所定の位置へ、車両を導く。


「移動の時[伊予鉄800型]」

レッカー車のアームと、線路の位置をピタリと合わせ、
ゆっくり入ってきたトレーラーが止まった。

作業灯の明かりを頼りに、
吊り上げの準備に取りかかる。

全ての作業が慎重に進められて行く。
アームを掛ける位置も、一ヶ所一ヶ所メジャーを当てる。

ベテラン故の慎重さが、見ていても伝わってくる。

扉の中に[伊予鉄800型] 

2本のレールの上に納まった車両。
その中に誘うように、一枚の扉が開いている。


「扉の中に」

車内の明かりは、まだ点けることが出来ない。
作業灯が側面を照らすだけ。

この車内にお客さんの笑顔が並ぶのは、
もう少し時間が掛かる。

本線を走り始めたとき、
この扉からお客さんが一人二人と乗り込んで行く。

一番乗りは誰だろう。
お客さんの初めの一歩から、
銚子電鉄の新しい風景が始まって行く。